第3種第1級

芳賀・宇都宮LRTの工事状況や各種設備などを解説しています。

各記事まとめ

工事解説

軌道工事

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あれこれシリーズ

本線設備-軌道設備-編

本線設備-電車線路設備-編

本線設備-信号・通信設備-編

車両基地編

市町道認定編

治水、浸水対策編

渋滞対策編

用地編

橋梁一覧

完成予想図

※完成予想図はあくまで現地の状況等から描いたものであり、実際の完成形とは異なる場合があります。その点ご留意の上ご覧ください

駅東中央交差点~峰町立体(峰町交差点)

峰町立体(峰町交差点)~陽東3丁目交差点

陽東3丁目交差点~平出交差点

平石停留場~鬼怒川右岸

野高谷町交差点付近

野高谷町交差点~ゆいの杜西(刈沼町交差点)付近

ゆいの杜西付近~芳賀町境付近

芳賀町境付近~芳賀町管理センター前交差点

芳賀町管理センター前交差点~かしの森公園前

かしの森公園前~芳賀・高根沢工業団地

工事の記録

宇都宮駅東口~峰町立体

構造の概要

2018年4月~2020年10月

2020年12月~2021年12月(宇都宮駅東口部)

2020年12月~2021年12月(駅東口中央~峰町立体)

2022年3月~2022年12月(宇都宮駅東口部)

2022年3月~2022年5月(駅東口中央~峰町立体)

2022年8月~2022年12月(駅東中央~峰町立体)

峰町立体~陽東3丁目交差点

2018年4月~2020年10月(用地買収の記録)

2020年1月~2020年12月

2021年3月~2021年9月

2021年12月~2022年3月

2022年5月~2022年8月

2022年9月~2022年12月

陽東3丁目交差点~平出架道橋

2018年4月~2020年10月

2020年12月~2021年3月

2021年9月~2021年12月

2022年3月~2022年5月

2022年8月~2022年12月

平出架道橋(立体区間

はじめに&工事の記録(2018年4月~2020年12月)

2020年10月~2020年12月

2021年3月~2022年3月

2022年5月~2022年12月

平石停留場

はじめに&工事の記録(2018年4月~2020年10月)

新4号横断部

導入

2018年4月~2019年11月(用地買収の記録)

2019年8月~2020年10月

 

平石平面区間

はじめに&工事の記録(2018年4月~2020年12月)

 

鬼怒川右岸立体区間

はじめに&工事の記録(2018年4月~2020年10月)(用地買収の記録)

橋梁工事

2019年3月~2020年12月 (工事用道路&A1~P6)

2019年3月~2020年12月(P7~P10)

擁壁区間

2020年12月

鬼怒川橋梁

導入(橋梁工事の概要)

2018年10月~2019年6月(右岸)

2018年10月~2019年6月(左岸)

2019年11月~2020年6月(右岸)

2019年11月~2020年6月(左岸)

2020年12月

 

鬼怒川左岸立体区間

導入

用地買収の記録:区間西側(2018年10月~2020年10月)

用地買収の記録:区間東側(2018年10月~2020年12月)

2018年10月~2019年3月

2019年3月~2019年5月

2019年6月~2019年8月

2019年9月~2019年10月

2019年11月~2019年12月

2020年1月~2020年3月

2020年10月~2020年12月

 

清原工業団地

導入

 

野高谷立体区間
ゆいの杜西~芳賀町
芳賀町境~芳賀管理センター
芳賀管理センター~終点

車両基地

その他

野高谷町交差点の歴史

芳賀宇都宮LRTの工事遅れの原因を解く(その1・宇都宮市内)

芳賀宇都宮LRTの工事遅れの原因を解く(その2・芳賀町内)

 

軌道敷の定義を考える

はじめに

宇都宮芳賀ライトレール線(ライトライン)が2023年8月26日に開業して以降、同年9月末までにすでに3件の路面電車対自動車の交通事故が発生し、軌道系交通に関する交通ルールの理解が課題になっています。

特に3番目に宇都宮市陽東5丁目地内で発生した案件は、ゼブラゾーンに滞留する右折待ち車両に路面電車接触するという極めて取り扱いが難しい事故でした。

本件は道路交通法第21条が最も関連すると考えられますが、この事故について個人的に調べるうちに、そもそもこの道路交通法第21条における「軌道敷」の定義がはっきりとしていないことに気が付きました。

本記事は、この「軌道敷」の定義について、個人的に整理したものです。

なお各法律所管等に確認したものではなく、あくまで個人の見解として受け止めていただけますと幸いです。

道路交通法第21条とは

条文

道路交通法第三章では「車両及び路面電車の交通方法」が示されており、その中の第一節「通則」において、第21条1~3の軌道敷内の通行方法が示されています。

以下は第二十一条の条文になります。

(軌道敷内の通行)
第二十一条 車両(トロリーバスを除く。以下この条及び次条第一項において同じ。)は、左折し、右折し、横断し、若しくは転回するため軌道敷を横切る場合又は危険防止のためやむを得ない場合を除き、軌道敷内を通行してはならない。
2 車両は、次の各号に掲げる場合においては、前項の規定にかかわらず、軌道敷内を通行することができる。この場合において、車両は、路面電車の通行を妨げてはならない。
一 当該道路の左側部分から軌道敷を除いた部分の幅員が当該車両の通行のため十分なものでないとき。
二 当該車両が、道路の損壊、道路工事その他の障害のため当該道路の左側部分から軌道敷を除いた部分を通行することができないとき。
三 道路標識等により軌道敷内を通行することができることとされている自動車が通行するとき。
3 軌道敷内を通行する車両は、後方から路面電車が接近してきたときは、当該路面電車の正常な運行に支障を及ぼさないように、すみやかに軌道敷外に出るか、又は当該路面電車から必要な距離を保つようにしなければならない。
(罰則 第百二十一条第一項第八号)

この条文において、明確に軌道敷内の車両の通行が禁止されていることがわかります。原則禁止であることから、「軌道敷内通行禁止」の標示等は存在しません。ですので宇都宮芳賀ライトレール線上も「軌道敷内通行禁止」という標識は存在しません。

この条文内で頻繁に「軌道敷」という言葉が出てくるわけですが、道路交通法上に「軌道敷」がどこからどこまでなのかという定義は存在しません。

軌道敷の定義とは

現在一般的に普及している軌道敷の定義

Google先生に聞いたところ、道路交通法における軌道敷の定義として、以下を上げているものが多くヒットします。その概要は以下の通りです。

敷石や線で示されている。その他の場合にはレールの幅に左右それぞれ610mmを加えた部分を軌道敷とする。

上記はWikipedia*1で示されている軌道敷の定義ですが、上記とほぼ同じものが非公式の解説サイトや、自動車教習所の資料としてヒットします(サイトによってはレール左右0.61mとしか書いていないところも多い)。

で、Wikipediaでは上記の定義の出典として「軌道建設規程第11条」をあげています。(他のサイトでは道路交通法第21条によると...などと書いていますが、道路交通法には書いてないですね...)

この軌道建設規程第11条には下記のようなことが書いてあります。(軌道法関連はカタカナ表記で分かりにくいので、一部わかりやすく書き換えています)

第十一条 併用軌道においては軌条間の全部、および左右各0.61mはその軌道を敷設する道路の路面と同一構造とし、軌条面と道路面の高低は同じとする

そもそも軌道敷とは道路法上は道路そのものですので、軌道の整備では敷設する道路と構造や高さをそろえましょうという条文であり、この条文の存在意義自体は理解できます。

ただこの軌道建設規程第11条の範囲を、道路交通法第21条の軌道敷として定義してよいのかという疑問が生じます。

なぜかといえば、レール面から0.61mの範囲に、実際にレール上を通行する車両もしくは車両限界が収まらない可能性があるからです。

現在わが国における路面電車でよく採用されている軌間は「1,435mm」ですが、ここに左右「610mm」を足すと「2,655mm」になります。路面電車の車両幅は多くが2,500mm程度とされていますから、この場合は収まるように見えます。

しかし軌道建設規程第10条には以下のような規定があります。

②本線路においては車両と中央柱やその他の工作物との間隔は230mmを下回ってはならない

この工作物には建築限界を有する一般的な車道の範囲も当然対象に含まれるはずです。つまり2,500mに左右230mmをさらに足すと2,960mmとなり、この時点ではみ出ています。

さらに軌道建設規程では軌間について762mm、1067mm、1435mmのいずれかとするとあり、他に多く採用されている「1,067mm」において左右に「610mm」を足しても「2,287mm」にしかならず、これはどう考えても車両自体がはみ出ます。

※実際は軌条頭部から測るため、若干数値が大きくなると思います

そもそも軌道建設規程で出てくる左右610mmという幅については、軌道建設規程の上位に位置する軌道法の第12条第1項でも出てくるのです。

ここでは

軌道経営者は軌条間の全部および、その左右各0.61メートルに限り道路の維持及修繕をする

と書いてあります(一部わかりやすいように書き換え)。

道路法上は軌道敷は道路そのものであり、道路管理者が維持修繕を行うことになりますが、軌道法において軌道敷の維持修繕は軌道経営者が行うことと定めており、この条文はその範囲を指定しているものになります。

つまりあくまで軌道経営者が道路上で維持修繕をすべき範囲を定めているだけであり、実際に通行する車両の車両限界がこの範囲に収まらなければならないと定めているものではありません。

実際に軌道法が制定された当時、一般的に併用軌道においても枕木上にレールを固定し、道床上を敷石やアスファルトで舗装しており、枕木が敷設されている範囲は当然同省として軌道経営者が道路に手を加える範囲に相当することから、枕木の範囲を含めるためにこのような範囲の指定となったと考えられます。

木枕木の寸法として、軌間1067mm用は幅2100mm、1435mm用は2600mmが一般的な仕様であり、この寸法に若干の余裕を加えた範囲を、軌道経営者が管理すべしと定めたため、軌条左右0.61m(つまり当時でいう2尺相当)の幅員が定義されたと考えられます。

よってこれはあくまで道路上軌道経営者が管理すべき範囲を定めただけであり、車両が実際に通行する幅員ではないことから、この幅員を道路交通法上の「軌道敷」として定義することが果たして的確なのかは非常に疑問が生じます。

ところで軌道建設規程ではその他に第8条や第9条でよくわからない中途半端な数値が出てきますが、制定当時は尺貫法を用いており、1間を基準に考えていたことからこのような中途半端な幅員が定義されていると推測されます。

また、現状多くのサイトで軌道敷を定義しているもう一つの文言である「敷石や線で示されている範囲」についてですが、この範囲指定については軌道法や軌道建設規程上ではどこにも触れられていません。

道路構造令における軌道敷

そもそも前節のような軌道敷の定義がなぜ広まったのかというと、そもそもわが国の法律等で明確に軌道敷を定義したものが存在しなかったことが理由として考えられます。

しかしながら平成13年の道路構造令の改正により、道路構造令第12の2において明確に軌道敷が定義づけされました。その内容は下記のとおりです。

第二条

十二の二

軌道敷
専ら路面電車(道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第二条第一項第十三号に規定する路面電車をいう。以下同じ。)の通行の用に供することを目的とする道路の部分をいう。

明確に道路交通法における路面電車が通行するための道路の部分をこの政令上で軌道敷と定義しています。

またさらに道路構造令第9条の3において、軌道敷の幅員についても明確に規定されました。

第九条の二    軌道敷の幅員は、軌道の単線又は複線の別に応じ、次の表の下欄に掲げる値以上とするものとする。
単線    3m
複線    6m

ここでわが国では初めて軌道敷の範囲が明文化されたことになります。

なお単線3m、複線6mという数字の根拠ですが、

我が国の路面電車車両の最大幅はおおむね2.5m以下であるので、軌道建設規定に定められた他の工作物との距離の規定である「0.23m」以上の値を考慮し、単線では2.5m+両側0.23m(0.46m)で数字を丸めて3mとしており、複線ではさらに軌道中心間隔の規定である0.4m以上を考慮し、6.0m以上と定めた

とあります。*2

つまりこの幅員こそが、実際に走る車両の幅と工作物までの距離を考慮した軌道敷であり、この範囲の外であれば、路面電車車両とは接触することはありえないことがわかります。

どう考えても道路交通法における軌道敷は、こっちの範囲の方が的確ではと思います。

ちなみにですが、軌道建設規程にはこのような条文があります(わかりやすく書き換えています)

第五節 軌道および橋梁
第17条 枕木の下面より施工基面までの道床の厚さは軌間1067mmおよび1435mmのものでは100mm以上、軌間762mmのものでは76mm以上とする
第17条の2

① 軌道および橋梁の各部は動荷重に耐えうる負担力を有しなければならない
② 併用軌道における軌道および橋梁の構造は前項に規定するものを除き、道路構造令(昭和四十五年政令第三百二十号)(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第三条第三号の都道府県道および同条第四号の市町村道に係るものは同令および同法第三十条第三項の条例)の規定によらなければならない

上記のような条文があり、そもそも軌道建設規程においても軌道の構造については道路構造令の規定によるとあることから、道路としての軌道敷はやはり道路構造令が上位にあり、軌道建設規程においても軌道敷の範囲は道路構造令の定義と同じになるのではないかと考えます。

そう考えると道路交通法における軌道敷の範囲は、道路構造令における軌道敷の範囲が相当するのではないかと思います。

なお単線3m以上、複線6m以上とありますが、これはそもそも軌道建設規程をはじめ関連法規で軌道法に準拠して運行する車両の幅が定められていないため、標準箇所においてもこの幅員を超える可能性があるからです。

実際宇都宮芳賀ライトレールの許可上の車両幅は2.65mであり、上記の考え方だと

単線:3.11m以上

複線:6.16m以上

となります。

なお宇都宮芳賀ライトレールでは基本的にセンターポールであり、さらにその分必要相当の幅員が加算されるため、軌道敷は6.5mとなっており、この幅員がそのままのちに記述する都市計画決定の範囲にもなっています。

※架線柱が0.28mとしているため、左側から(0.23(工作物までの距離)+2.65(車両幅)+0.23(工作物までの距離)+0.28(架線柱)+0.23(工作物までの距離)+2.65(車両幅)+0.23(工作物までの距離)=6.5)mとなっている。

軌道敷の範囲を明示する必要はあるのか

さて次の疑問です。

これまで軌道に関する各種条例等を読んできましたが、どこにも軌道敷の範囲を道路上に示す方法が示されていません。

しかしながら道路構造令が改正され軌道敷が明確に示されて以降に出版されている「道路構造令の解説と運用」の3章、2-12軌道敷および路面電車停留場において軌道敷と車道等の区分の方法が示されています。

以下は本書内にて解説されている内容になります。

(7)軌道敷と車道等の区分 

軌道敷と車道との間の必要な側方余裕については,車道に接続する路肩として確保する。また,安全性の観点から,軌道敷と車道は,区画線,縁石,舗装パターン等による区分をを行うものとする。さらに設置のための幅員が確保できる場合は,さく,分離帯等により車道等と分離することが望ましい。軌道敷と車道等の区分の例を図●に示す。

*3

この図では、軌道敷と車道の間にさらに路肩を設けており、実際は路肩と車道の境界に区画線があり、路肩と軌道敷の境界にさくを設けて区分した例を示しています。

その他軌道敷の舗装パターンを変えたり、縁石によって区分する方法が示されています。

では道路構造令が改正されて以降、実際に新たに敷設された併用軌道ではどうなっているか見ていきましょう。

たとえば富山地方鉄道富山軌道線のうち都心環状線では下記の形で敷設されています。

都心環状線では一部区間、軌道敷と車道に同じ舗装パターンを用いており、視覚的にはその境界の認識が難しくなっています。

軌道敷と車道の間に路肩があり、路肩内に融雪設備が設置されています。道路上は融雪設備がある部分は軌道敷ではありません。軌道敷と路肩の境界は、同じ舗装パターンながらわずかな溝が入っており、道路上はここに境界があることがしっかりわかります。路肩と車道の境界には区画線があり、視覚的にはこの区画線の内側が軌道敷であると認識されるような気がします。

また導流帯(ゼブラ)の標示の仕方については、路肩と車道の境界の区画線はそのままに、さらに車道部分を示す区画線との間を導流帯とする標示の仕方が取られています。

ちなみに富山港線の併用軌道部分も基本的に同様です。

これは道路構造令の解説と運用における車道と軌道敷の区別の仕方と非常に近い方法で、この区分の方法が一般的であると考えられます。

宇都宮市芳賀町の整備方法を考える

富山を見たところで、次に宇都宮市芳賀町の現状を見てみます。

現状宇都宮芳賀ライトレール線では、センターリザベーションでの整備区間について、すべて上記のような標示を行っています。

軌道敷のうち車道側に位置する部分について、レール敷設用に用いる軌道スラブを除いた部分すべてを、区画線と同じ塗料において色を変えています。

さらにその外側に最低0.5mの路肩(側方余裕)を設け、路肩と車道の間に区画線を設けるような運用がなされており、これまで富山で用いられていた運用方法とは異なっています。

また軌道敷であることを明示する路面標示と区画線との間の路肩の幅員は0.5mを基準としており、路肩の範囲が0.5mを超える場合、その間すべてに導流帯の標示を行っています。

この点が富山の整備事例と大きく異なるところです。

なので軌道敷であることを明示する路面標示と区画線との間をすべてゼブラとするのではなく下記のように路肩と車道の境界に区画線を引いたうえで、この区画線との間のみゼブラを標示する方法がまだ良かったのではないかと思います。

とはいえ、そもそも軌道敷を示す表示を白い太線としたことが、本当に適当であったのかは疑問が残ります。施工単価も高く、今から別の色に塗り替えるというのは難しいかもしれませんが、改善すべき点ということは間違いないかと思います。

(おまけ)都市計画法における軌道敷

もともと1968年に制定された新都市計画法では、軌道が明確には位置づけられていませんでした。しかし1998年に特殊街路として「路面電車道」が道路種別に位置付けられ、都市計画運用指針にも路面電車道は「主として路面電車の交通の用に供する道路」と明記されています。

現状わが国の制度下で、LRTを新設しようとする場合、以前の記事で紹介した通り、街路事業として行うことが必須であり、このことから都市計画決定も必須となります。

また既存の都市計画道路上に新たに路面電車道を敷設する場合も、都市計画道路上にさらに特殊街路を決定することになります。

一般的に新たに決定する都市計画道路は道路構造令に基づいて設計を行い、その設計した道路の範囲について都市計画決定を行います。

※場合によっては道路の新設による盛土・切土を行うための法面等の範囲すべてを都市計画決定することもあります

路面電車道においても同様で、道路構造令・軌道建設規程に基づいて設計した範囲について都市計画決定を行うことになります。

基本的にセンターリザベーション形式で既存の道路上に併用軌道を新設する場合、当然道路面と同じ構造であることから、路面電車道に単独で法面や切土が生じることはなく、この場合道路構造令に基づいて設計した軌道敷の範囲が、そのまま都市計画決定上も特殊街路(路面電車道)の範囲となると考えられます。

ただし路面電車道には停留場の範囲も含むことから、停留場がある部分においては、道路構造令における軌道敷の範囲と、都市計画決定上の路面電車道の範囲は異なることになるはずです。

※道路構造令上軌道敷と路面電車停留場(第31条の3)は別のものとなっている

また宇都宮市内に存在する、擁壁で嵩上げを行う区間については、道路構造令上の軌道敷≠都市計画決定上の路面電車道となっている区間が存在します。

*4

もともと都市計画決定時、擁壁によって嵩上げを行う区間については、おそらく壁面が鉛直ではない工法で基本設計を行い、その範囲を都市計画決定したものと考えられます。

しかしその後の詳細設計で、一定の高さを超える擁壁区間については、RRR-B工法と呼ばれる長期の維持管理に優れかつ、壁面が鉛直で構築が可能な擁壁工法が採用されることになりました。そのため、軌道敷の範囲については高架橋部分と同じ8.4mで充足することとなり、都市計画決定幅員より左右1.5mを余す形で施工・供用されました。

そのため側道が建設された区間では、もともとの都市計画決定線と供用されている軌道敷の間も側道と同じ構造で舗装され、区画線は都市計画決定線の外側にあるものの、一般に通行することが可能となっています。

なお上記写真の奥には調整池が築造されていますが、この調整池についてはすべてが都市計画決定線の外側に建設され、調整池と軌道敷の間は砂利になっています。

おわりに

やはりどう考えてもレール端の左右0.61mを軌道敷の範囲とする考えは、道路交通法第21条の3の考え方からしても矛盾しており、適当ではないと考えます。

しかしこの0.61mという数値が、なぜか自動車教習所の教本でも使われていることもあり、もし本当に0.61mという数値で道路交通法における軌道敷が定義されているのであれば、その解釈は変更するべきなのでは?と思います。

もちろん実務上で道路交通法における軌道敷を現状どう解釈しているのかは、公式資料がなく一切不明であり、この点については今後警察庁等に確認を行っていきたいと考えています。

 

 

*1:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BB%8C%E9%81%93%E6%95%B7

*2:道路構造令についての解説による

https://www.mlit.go.jp/road/sign/pdf/kouzourei_full.pdf

*3:道路構造令の解説と運用:日本道路協会、2004

*4:芳賀・宇都宮 LRT の整備事業とRRR 工法の工事事例:RRR工法協会だより、No.45、2020.

芳賀宇都宮LRTのあれこれ(その1-1・本線設備-軌道設備-編)

はじめに

本記事は従来公開していた「芳賀宇都宮LRTのあれこれ(その1・本線設備編)」が長くなったため、軌道設備に関係する部分のみを分離したものです。

なお本記事の内容については、あくまで個人(第3種第1級)が収集した内容であり、公式の内容ではありません。

この内容を基に各種関係機関へ問い合わせるなどの行為はお止めください。

また本内容を参考にする場合、出典を明記してください。

芳賀宇都宮LRTの基本情報

以下はWikipediaでも確認できることですので今更間がありますが一応まとめておきます。

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芳賀宇都宮LRTのあれこれ(その1-2・本線設備-電車線路設備-編)

はじめに

本記事は従来公開していた「芳賀宇都宮LRTのあれこれ(その1・本線設備編)」が長くなったため、電車線路設備に関係する部分のみを分離したものです。

なお本記事の内容については、あくまで個人(第3種第1級)が収集した内容であり、公式の内容ではありません。

この内容を基に各種関係機関へ問い合わせるなどの行為はお止めください。

また本内容を参考にする場合、出典を明記してください。

電車線路設備構造、通信・信号設備

 架線柱装柱

芳賀宇都宮LRTの電車線路設備について、通常の鉄道の電車線路設備と同様に、き電線・帰線・電車線(トロリ線)から構成されます。

電車線は基本的に直吊架線方式で、ほとんどの区間はセンターポール式の架線柱によって架設されます。

き電線・帰線は軌道直下の埋設管路に敷設される形式です。一般的なセンターリザベーション方式の軌道区間における電車線路設備構造を以下に示します。

※帰線は設計変更によりレール兼用になり、敷設されなくなりました

電車線引き留め部などは、特殊な楕円型の架線柱が使用されています。

峰町立体では、従来の道路照明を架線柱に共架する必要があったため、特殊な架線柱が使用されています。

 

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グリーンスタジアム前など軌道敷が広くなる区間や、片持ち式の架線柱を採用する場所では、鋼管ビームに下束が設置され、そこに架線支持物が設置されます。

軌道用信号の見通し確保のため一部例外的に採用されている片持ち式の例

→施工時は軌道中央に軌道用信号機が建植されていましたが、試運転開始前に軌道左側へ移設されています。片持ち式にした意味...

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↑鋼管ビームの例。ビームに下束が設置され、その後電車線(トロリ線)の施工となる。

↑電車線施工後

 

カーブ区間で軌道外側から電車線を支持する必要がある場所ではこのような特殊な鋼管ポールが使用されています。

JR宇都宮駅東口付近の急曲線では電車線を支持するために吊架線が別途敷設されています。

函渠内では架線高を最小まで下げている関係で、函渠内に吊架線があります。

 

また終点の芳賀・高根沢工業団地付近には道路を跨ぐ鋼管トラスが設置されています。

↑終点付近の鋼管トラス。シーサス上でセンターポールが設置できないため、8車線相当の幅員を跨ぐ鋼管トラスが設置された。

交差点では太めの架線柱から吊架線を渡しトロリ線を支持します。場所によっては架線柱が信号柱を兼ねます。なお吊架線にはベクトランコンポジットロープと呼ばれる、絶縁性の高いロープが採用されており、碍子を必要としません。

グリーンスタジアム前交差点内の吊架線。碍子が存在しない。

架空電車線方式

架空電車線は基本的に直接吊架式が採用されていますが、鬼怒川橋梁とその前後のみ、将来の高速運転に備えシンプルカテナリー式が採用されています。

↑基本的な直接吊架式区間の様子。センターポール区間では軌道建設規程の定めにより、架線柱上に照明が設置されています。

↑架線柱照明点灯の様子。間接照明のようなもので、はっきり言って道路照明の役割は果たしていない。

また架線柱番号は基本的に起点側の停留場略名+停留場からの通し番号が採用されていますが、ここでの停留場名には仮の停留場名がそのまま採用されています。

↑鬼怒川橋梁上のシンプルカテナリー式が採用されている区間

↑清陵高校前~清原地区市民センター前の架線柱番号。仮名称の作新学院北の略称がそのまま使われている

き電区間と架線柱番号一覧

 

セクション

変電所間のセクションは、当初エアセクション式を採用する予定でしたが、すべてセクションインシュレータに変更になっています。

これにより電車がセクション間に停車することは限りなく少なくなっています。

↑電車線区分標とセクションインシュレータ(~今泉変電所と今泉変電所-平出変電所間のセクション)

↑セクション部分の拡大図

き電分岐盤

宇都宮芳賀ライトレール線ではき電線は基本的に埋設されていますが、き電線からトロリ線に分岐位置の地上に、き電分岐盤を設置し、トロリ線に接続しています。

なおき電分岐盤は概ね200~300m毎に設置されていますが、宇都宮市内のセンターリザベーション区間では道路上にき電分岐盤を設置する余裕がないため、停留場のホーム上に設置されています。

敷地に余裕がある区間では、き電分岐盤が独立して設置されている。

敷地に余裕がない宇都宮市内のセンターリザベーション区間では、き電分岐盤がホーム上に設置されている。

変電所

受電のための変電所は、今泉、平出、清原、芳賀の計4箇所に建設されています。

すべての変電所で受電側は東電配電線2回線となっています。特高線ではありません。

また変電所から軌道上までは埋設管路となっています。

・今泉変電所

市有地であるうつのみやまちづくりセンター(まちぴあ)の敷地内に建設されています。

用地買収の必要がなく一番最初に工事着手されました。写真は受電側接続前になります。

・平出変電所

車両基地内の入出庫線脇に建設されています。

車両基地内で先行して電車線を供用したため最も早く受変電を開始しています。

受電にあたり周辺に配電線がなかったことから、2回線別ルートで車両基地正門付近まで配電線を新設し、2回線受電しています。

(写真左橋の建物が平出変電所、右付近にあるのが受電設備)

写真中央の配電線は、鬼怒通りから軌道を跨ぐように新設された1回線分の配電線。東電PG平出変電所の直近から分岐しています。もう一回線は写真左で、直近まで来ていた配電線を延長しています。

・清原変電所

清原変電所は清原TCからやや北に進んだ道路脇に建設されています。なおここはもともとデュポンの敷地で用地買収により建設されています。

またここも付近に東電の配電線がなかったため、清原地区市民センター前から既存の配電線2回線を延伸し、受電しています。

・芳賀変電所

芳賀変電所はもともと芳賀バスターミナルだった敷地内(町有地)に建設されています。

隣接してオートテクニックジャパン線の変電所が建っていますが、こちらからの受電ではなく、写真手前の配電線から2回線受電しています。

・変電所遠隔管理

車両基地内の指令所より、すべての変電所の状況等が遠隔で管理できるようになっています。

 

芳賀宇都宮LRTのあれこれ(その1-3・本線設備-信号・通信-編)

はじめに

本記事は従来公開していた「芳賀宇都宮LRTのあれこれ(その1・本線設備編)」が長くなったため、信号設備に関係する部分のみを分離したものです。

なお本記事の内容については、あくまで個人(第3種第1級)が収集した内容であり、公式の内容ではありません。

この内容を基に各種関係機関へ問い合わせるなどの行為はお止めください。

また本内容を参考にする場合、出典を明記してください。

通信・信号設備

進路設定設備

芳賀宇都宮LRTでは電気転てつ機の操作を、従来の路面電車で一般的なトロリーコンタクターによる構成ではなく、車両上(運転台右下)の進路設定装置操作器であらかじめ設定した進路を、トランスポンダ方式で信号手前において地上子(ループコイル)経由で継電連動装置に送信することで進路を構成します。

またLRT専用の現示を出す必要のある特定の交差点においては、AF軌道回路の短絡による要求、もしくは軌道回路の短絡+ループコイル経由の要求により制御します(後述)。

 

↑進路設定器。行先と各使用線路に応じて割り当てられた番号を設定することで、各連動停留場進入時に自動的に進路要求がループコイルを通じて連動装置に送信されます

↑出発時は進路設定器一番右のRTSボタンを押下することで、進路が構成され進行現示がでます。そのため快速電車設定後も連動駅では通過運転は不可と想定されます。

車上進路設定器、ループコイル、無絶縁軌道回路(HFP軌道回路)はすべてドイツのHANNING & KAHL社のものが使用されています。

 

そして以下の写真が進路設定情報を受信するループコイル式の地上子です。ポイント制御の場合はおおよそ場内相当軌道信号機の1数十m手前と信号機直下の2カ所に設置されています。

バラスト軌道区間に設置されるむき出しのループコイル。写真右下の黒い箱はレールボックスと呼ばれ、ループコイル接続用の機器が内蔵されている。

なおこのループコイルは、連動駅での進路構成に使用されるほか、一部交差点での信号現示要求にも用いられます。

2対で設置されているレールボックスには無絶縁軌道回路の送受信機が格納されレールに接続されている。

宇都宮駅東口場内相当の進路構成用ループコイル。樹脂固定軌道区間ではループコイル上も樹脂固定され埋設されます。

手前が先行進路要求用、奥が信号機直下の進路要求用ループコイルです。

場内停止後要求する進路を変更する場合、CANボタン押下後進路設定番号を変更し、再度RTSボタンを押下することで進入番線を変更できる模様です。

また連動駅では無絶縁軌道回路(HFP軌道回路)があり、軌道回路の境界付近には電圧送受信用レールボックスも埋設されています。

以上の情報を基に構成した進路を示す信号機がこちらです。

↑2灯式軌道用信号機。上2灯が軌道用信号、下の1灯式がトランスポンダ反応灯になります。

↑3灯式軌道用信号機。上の3灯式のうち、上部2灯が進行方向、下1灯が停止現示となります。また下部の1灯式はトランスポンダ反応灯になります。

↑進路決定用ループコイル上を車両が通過し、トランスポンダ反応灯が点灯

↑車両側から要求した進路が開通すると、進路方向に軌道用信号が点灯する

 

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場内相当の進路構成の例

なお一般的な鉄道における場内信号機に相当する軌道信号では、進路構成および到着番線が空いている場合(HFP軌道回路により在線を検知)に現示が出ます。出発信号機に相当する軌道信号では、進路構成のみによって現示が出るため、前方の在線は検知しません。出発時に車上の出発ボタン(RTS)を押すことで進路が構成されるようです。

万が一正常に動作しなかった場合に備え、軌道用信号機近くに現場操作箱が設置され、手動で切り替えることも可能です。

交通信号機の制御

芳賀宇都宮LRTは法律上は併用軌道、いわゆる路面電車ですので、信号交差点は全区間車両用信号灯器に従うことになります。

本事業においては事故防止の観点からセンターリザベーション方式で整備される区間では一般交通には基本的に右折車分離式の信号制御を採用するため、軌道に対する信号は青信号ではなく黄色矢印による現示となります。

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青色矢印は自動車にのみ有効のため、全交差点に軌道用灯器(黄色矢印)が設置されます。自動車側からすると多少の混乱はあるかもしれませんが、基本的にLRT車両と自動車の交錯は起こりえない制御のため、かなり安全性の高いものとなります。

またこれらの信号は県警の管理となります。

↑車両用信号電材+電車用コイトの組み合わせ

↑車両用、電車用ともにコイトの組み合わせ

常に赤現示が点灯するため、電車用に対する停止現示(×)は不要です。

LRTにのみ現示を出す必要のある特殊な交差点における信号制御

サイドリザベーション方式となる区間や、平石小学校前・清原地区市民センター前、芳賀町管理センター前では、LRTと他の交通を分離する必要があり、LRTにのみ現示を出す必要があるため少々特殊な信号システムとなります。

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上の例は清原地区市民センター前交差点の例です。このように軌道に対してのみ独立した現示を出す必要のある交差点では交差点の手前にAF軌道回路を設け、軌道回路の在線検知、または踏切制御子の在線検知をもってLRT用の現示を県警が管理する交通信号機の制御器に要求します(車両交通信号要求設備)。

↑電車専用現示を出す2灯式信号灯器。こちらは市管理となる。

↑2灯式軌道用信号はすべてコイト製が採用されている

宇都宮駅東交差点

→県警との協議により、車両用信号に従うこととなり、現示要求設備は設置されませんでした。

・平石中央小学校前交差点

→下り(東行き)は各停・快速別要求。快速用ループコイルは交差点停止線約275m手前

→上り(西行き)は交差点停止線約280m手前の軌道回路で在線検知し要求

・清陵高校前交差点

→下り(東行き)は交差点停止線約300m手前の踏切制御子による検知で要求

→上り(西行き)は各停・快速別要求。快速用ループコイルは交差点停止線約305m手前

・清原管理センター前交差点

→下り(東行き)は交差点停止線約280m手前の踏切制御子による検知で要求

→上り(西行き)は種別にかかわらず清原地区市民センター停留場出発直後のループコイルで現示を要求

・デュポン東交差点(清原地区市民センター前交差点)

→下り(東行き)は種別にかかわらず清原地区市民センター停留場出発直後のループコイルで現示を要求

→上り(西行き)は交差点停止線約300m手前の踏切制御子による検知で要求

・キャノン西交差点

→種別にかかわらずグリーンスタジアム前の出発用ループコイルで現示を要求

芳賀工業団地管理センター前交差点

→現示要求設備は一式整備されましたが、県警との協議により南北側に転回禁止規制を入れたうえで、南北方向の右折専用現示と軌道用現示を同時に出すことが可能となり、軌道用現示単独で出すことがなくなったため、現示要求設備は使用されていません。

ただし交差点内に相当する軌道回路上に在線がある間は、軌道用現示を現示し続ける機能は使用されている可能性があります

以上5交差点ではAF軌道回路の在線検知による要求に応じて、軌道用現示を出します。なお平石中央小学校前交差点(下り)、清陵高校前交差点(上り)、芳賀工業団地管理センター前交差点(下り)では要求ポイントと停留場が重なるため、軌道回路の短絡による要求に加え、快速用のループコイルと各駅停車用のループコイルを設置し、2つの要求をもって信号現示を制御器に要求します。概念図は以下の通りです。

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交差点の270~300m手前に設置された在線検知(軌道回路または踏切制御子)により現示要求が送られ...↓

直近の現示の切り替わりに軌道用現示を割り込ませ、電車進入前に軌道用現示を出すことが可能です。なお場合により直前現示の短縮も行われます。

また一度現示を要求すると、現場操作をしない限り電車が通過するまで軌道用現示が出続けます。

無信号横断箇所の安全対策

芳賀宇都宮LRTでは車道との交差点のうち、信号が設置されない横断箇所がいくつか存在します。

以下は車道もしくは歩行者用通路での無信号横断箇所の設置数です。

区間 無信号横断箇所
宇都宮駅東口 1
平石~平石小学校前 2
平石~車両基地入出庫線 1
平石小学校前~(鬼怒川橋梁) 1
飛山城跡 1
清陵高校前~清原地区市民センター前 3
清原地区市民センター前~グリーンスタジアム 1
グリーンスタジアム前~(野高谷) 6

以上の無信号横断箇所では、LRT車両の接近を示す電車接近表示装置が設置されます。また歩道が直接軌道と交差するような箇所にも同様の電車接近表示装置が設置されます。合計すると16ヵ所に設置されるようです。

電光表示のほか、パトライトの発光、音声による警告が行われます。

なおこれらの動作には踏切制御子が使用されますが、連動駅では軌道回路による検知やRTS押下による軌道信号開通によって動作する箇所が存在します。

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グリーンスタジアム前~(野高谷)の設置例。

旅客案内向け在線検知

芳賀宇都宮LRT(宇都宮芳賀ライトレール線)においては、各停留場に旅客案内用装置(LCD式発車標)が設置され、電車の接近状況をLCD上と音声によって案内するシステムを構築しています。

通常一般的な鉄道では軌道回路を用いた在線検知や、最近ではGPSを用いた在線検知などでこれらのシステムを構築するのが一般的ですが、芳賀宇都宮LRTでは少し変わったシステムを採用しています。

まず各車両の運行系統情報は車載装置と管理棟(車両基地内)に設置された運行管理システム間を公衆電話回線にて通信を行います。

一方で各車両の位置情報については、通過する車両運転台付近に設置されたタグから発信される電波を、各停留場に設置されたRFIDタグ受信機が受信することによって検知します。正確な確認は出来ていませんが、先頭運転台のタグを受信し駅進入と判断、後方運転台のタグを受信し駅を発車(通過)と判断している可能性が高いです。

路線上、信号関連の制御のために何か所か無絶縁軌道回路が設置されていますが、これらは案内上の在線検知には用いられません。

↑停留場内に設置されているRFID受信機(ホーム先端にあることが多いです)

各駅には旅客案内用表示板が設置されています。

RFIDの検知状況に応じて、2停前から電車の接近状況を知らせます。

おわりに

以上が芳賀宇都宮LRTのあれこれのうち、主に信号・通信設備に関するものです。

※2023年9月20日全体的に加筆・修正のうえ記事分離

芳賀宇都宮LRT(宇都宮芳賀ライトレール線)の橋梁

はじめに

本記事では、宇都宮芳賀ライトレール線で整備された橋梁についてまとめます。

橋梁一覧

整備された橋梁は以下の通りです。

鉄道橋で一般的に良く採用される連続ラーメン橋が一切ないのが特徴です。

※表中の施工業者は上部工施工業者のこと

※ボックスカルバート橋は除く

各橋梁

平出架道橋

橋梁形式:3径間連続非合成鋼曲線箱桁橋

橋長(m):130.0m

径間長(m):(起点側から)32.8m、63.0m、33.8m

完成年:2022

施工会社:古河中村岩原建設共同企業体

架設工法:トラッククレーンベント

平出高架橋

橋梁形式:プレテン形式PC3径間単純T桁橋

橋長(m):74.0m

径間長(m):(起点側から)24.0m、24.0m、24.0m

完成年:2021

施工会社:オリエンタル白石

架設工法:トラッククレーン

下平出第2架道橋、下平出第1高架橋、下平出第3架道橋、下平出第2高架橋

橋梁形式:プレテン形式PC10径間単純T桁橋

橋長(m):204.5m

径間長(m):(起点側から)20.0m、20.0m、20.0m、20.0m、20.0m、20.0m、20.0m、20.0m、20.0m、24.5m

完成年:2021

施工会社:オリエンタル白石(A1~P3)、川田工業(P3~P7、P9~P10)、日豊工業(P7~P9)

架設工法:トラッククレーン

鬼怒川橋梁

橋梁形式:9径間連続PC箱桁橋

橋長(m):643.0m

径間長(m):(起点側から)65.0m、70.0m、78.0m,78.0m,78.0m,78.0m,78.0m,60.0m,58.0m

完成年:2021

施工会社:三井住友渡辺増渕宇都宮土建建設共同企業体(右岸側328m),オリエンタル白石中村野澤小平建設共同企業体(左岸側315m)

架設工法:片持ち張り出し架設

※起終点端側は固定支保工および支柱式支保工

竹下第1高架橋、竹下第1架道橋

橋梁形式:プレテン形式PC8径間単純T桁橋

橋長(m):204.5m

径間長(m):(起点側から)23.5,23.5,23.5,23.5、23.5,23.5,23.5,23.0,23.0

完成年:2021

施工会社:オリエンタル白石(P1~P4、P8~A2)、野澤宇都宮土建建設共同企業体
(P4~P8)

架設工法:トラッククレーン

竹下第4架道橋

橋梁形式:ポステン形式PC1径間T桁橋

橋長(m):40.5m

径間長(m):(起点側から)40.5m

完成年:2020

施工会社:長嶋組

架設工法:トラッククレーン

竹下第2高架橋

橋梁形式:プレテン形式PC3径間単純T桁橋

橋長(m):72.0m

径間長(m):(起点側から)24.0m、24.0m、24.0m

完成年:2020

施工会社:野澤實業(P1~P2、P3~A2)、岩原産業(P2~P3)

架設工法:トラッククレーン

竹下第5架道橋

橋梁形式:鋼単純箱桁橋

橋長(m):57.8m

径間長(m):(起点側から)57.8m

完成年:2022

施工会社:東綱栃舗建設共同企業体

架設工法:トラッククレーンベント

竹下第3高架橋

橋梁形式:プレテン形式PC5径間単純T桁橋

橋長(m):100.0m

径間長(m):(起点側から)20.0m、20.0m、20.0m、20.0m、20.0m

完成年:2022

施工会社:岩原産業(P1~P2)、富士ピー・エス (P2~A2)

架設工法:トラッククレーン

野高谷第1高架橋

橋梁形式:ポステン形式PC3径間
単純T桁橋

橋長(m):123.0m

径間長(m):(起点側から)41.0m、41.0m、41.0m

完成年:2021

施工会社:増渕渡辺宇都宮土建建設共同企業体

架設工法:架設桁架設

野高谷第1架道橋、野高谷第2高架橋

橋梁形式:プレテン形式PC5径間単純T桁橋

橋長(m):47.5m

径間長(m):(起点側から)23.5m、24.0m

完成年:2021

施工会社:岩原産業

架設工法:トラッククレーン

野高谷第2架道橋

橋梁形式:3径間連続非合成鋼曲線箱桁橋

橋長(m):173.0m

径間長(m):(起点側から)53.8m、70.0m、48.8m

完成年:2023

施工会社:巴渡辺宇都宮土建建設共同企業体

架設工法:トラッククレーンベント

 

【工事の記録】平出架道橋(2022年5月~2022年12月)

2022年5月8日

平出架道橋の上部工は順調に生コン打設を行っています。

すでに上部工が完成している区間や擁壁部で、軌道工事が始まりました。

バラストの下に敷くゴム製のバラストマットが大量に搬入されています。

う回路となる側道はほぼ完成しているように見えます。

北側の側道がまだでした。絶賛路盤工事中です。

擁壁部では電車線路埋設管路の敷設が終わっています。

2022年8月18日

平出架道橋上部工も無事に完成しました。

側道が完成し、既存の市道は閉鎖されました。

側道が完成したことで橋梁区間も間近で見ることができるようになりました。

側道は平出高架橋P4~5間で反転します。なお将来的には左側の側道から鬼怒通りに抜けるように歩道ができる予定です。

軌道工事も進んでおり、西行きはレールの設置が完了しこれから締固めの段階です。っ東行きはPC枕木が仮置きされている状況です。

2022年9月3日

片持ち式の架線柱が建植されました。

レール敷設が進んでおり、訪問時は締固め用のバラストを搬入していました。

2022年12月2日

電車線も敷設され、軌道工事が完了しました。なお高架部も他の区間と同様直吊Y字式の電車線です。