第3種第1級

芳賀・宇都宮LRTの工事状況や各種設備などを解説しています。

芳賀宇都宮LRTのあれこれ(その3・市町道認定編)

はじめに

前回、前々回に引き続き、芳賀宇都宮LRTのあれこれを。今回は芳賀宇都宮LRTの市町道認定に関するあれこれを整理していきます。

市道認定状況の変更により修正加筆しました(2023/6/23)

なぜ市町道認定が必要なのか

その1で少しふれた通り、芳賀宇都宮LRTの軌道敷は全区間宇都宮市道または芳賀町道認定を受けており、全区間が併用軌道です。立派な橋りょう区間もすべて併用軌道です。

なぜ橋りょう区間も含めて軌道敷を全区間市道または町道認定し道路として整備する必要があるのでしょうか。その理由についてまずは整理していきます。

 

LRTの整備に対する総合支援スキーム

現在我が国ではLRTの整備費用に対して、1/2を国費で支援することになっています。こ

れは平成17年に地域公共交通活性化・再生法上に盛り込まれたLRTに関する上下分離制度によって、軌道運送高度化事業の認定を国土交通大臣より受ければ、軌道運送事業者と軌道整備事業者に分離し、軌道整備事業者に対しては施設整備主体に補助を行うことができるためです。この軌道整備事業者に対する各整備の支援には「社会資本整備総合交付金」を活用します。

この社会資本整備総合交付金はこれまで道路や河川などでバラバラだった国の地方公共団体向け補助金を一元化したものです。が、実はこの補助金の交付対象事業は道路や河川、下水道といった社会資本のみが対象で鉄道はありません。つまりLRTとしてこの整備支援スキームを活用して整備するなら、たとえ橋梁だろうとトンネルだろうと道路、つまり併用軌道として整備せよ、ということになります。

ここで今般の芳賀宇都宮LRTの事業主体、軌道整備事業者は宇都宮市及び芳賀町です。つまりそれぞれの事業主体が管理する道路として整備する必要があるのです。

軌道敷の市町道認定状況

芳賀宇都宮LRT事業では、軌道敷の都市計画決定を前に、平成28年3月に既存の市道上に軌道を敷設する区間を除き、全区間が市町道認定されました。宇都宮市道については6411~6415号線の5路線が新規認定されています。芳賀町道については県道宇都宮茂木線と重複する区間について町道1262号線として1路線新規認定されています。それ以外の区間、例えば市道1525号線などはもともと市道として認定されている区間上への敷設のため、軌道敷のみの市道認定はありません。

その後軌道敷完成後の管理の都合上かわかりませんが、既存の市道内に軌道敷を認定していた区間については、軌道敷とそれ以外の既存の市道部で市道認定が分離されました。

また軌道敷に並行して側道を建設する区間についても、軌道敷と側道で市道認定が分離されました。

・工事着手時

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・2022年3月市道認定変更以降

横断面図による市道認定の説明

センターリザベーション区間

上の市道認定状況について、例えば東宿郷停留場周辺の、市道1525号線上に軌道敷を建設する場合と、県道宇都宮向田線上に軌道敷を建設する場合では、以下のようになります。

市道1525号線区間





・県道宇都宮向田線区間

 

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橋梁・擁壁区間

また、鬼怒川前後の橋梁区間などは以下の通りです。

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ここが一番ややこしいのですが、橋りょう上も軌道敷のみの(車道も歩道もない)市道として認定されています。つまり公式で「専用軌道区間」としている区間は、正確には「併用軌道区間」となります。



ただし一部区間に橋梁(または擁壁)に並行して建設される側道については、軌道敷と同じ市道を構成する一部として建設されるようです。おそらく軌道敷が本線で、高架下の車道が副道扱いです2022年3月以降、軌道敷と側道で市道認定が分離されました

サイドリザベーション区間 

・工事着手時

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・2022年3月以降

そしてもっとややこしい区間があります。上の図の赤丸の部分、平石中央小学校前停留場周辺です。上の図は市道認定図ですが、赤丸の部分は市道329号線と軌道敷の市道6413号線がほぼ並行して重なっていますよね。ここは一体どうなっているのかという話です。

・工事着手時

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・側道分離後(2022/3~)

赤丸の区間の横断面図です。構成としては北から「歩道」「軌道敷」「車道」「歩道」の一体的な道路ですが、北側歩道と軌道敷が「市道6413号線」北側歩道が「市道6542号線」、軌道敷が「市道6413号線」、車道と南側歩道が「市道329号線」として整備されます。

 

一方で平石中央小学校前周辺と似たような横断面構成の清陵高校前周辺は、というと...

・工事着手時

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・2023/3~(軌道敷分離後)

 





軌道敷を含めて市道1436号線として建設されます。側道・軌道敷の市道認定分離により、平石中央小付近とは似ているようでさらに違う形になりました。

 

車両基地市道である

最後にもっとややこしい話をします。実は車両基地もすべてが市道6413号線を構成する施設の一部となっています。

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こちらは車両基地周辺の市道認定状況地図です。オレンジの線が認定市道の中心線を示しています。この地図だけだと車両基地市道かどうかはわかりません。

しかし入札公告時の情報を見てみると例えば車両基地造成工事では

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工事場所が市道6413号線となっています。

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軌道工事や路盤工事でも同様です。

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管理棟や検修庫、変電所といった建築物も市道6413号線の一部となっています。

おわりに

さて、以上が芳賀宇都宮LRTと市町道認定のあれこれでした。

法律上仕方がないとはいえ、どう見ても独立した軌道区間も併用軌道というのがなんとも変な話ですよね。