第3種第1級

芳賀・宇都宮LRTの工事状況や各種設備などを解説しています。

芳賀宇都宮LRTのあれこれ(その1-2・本線設備-電車線路設備-編)

はじめに

本記事は従来公開していた「芳賀宇都宮LRTのあれこれ(その1・本線設備編)」が長くなったため、電車線路設備に関係する部分のみを分離したものです。

なお本記事の内容については、あくまで個人(第3種第1級)が収集した内容であり、公式の内容ではありません。

この内容を基に各種関係機関へ問い合わせるなどの行為はお止めください。

また本内容を参考にする場合、出典を明記してください。

電車線路設備構造、通信・信号設備

 架線柱装柱

芳賀宇都宮LRTの電車線路設備について、通常の鉄道の電車線路設備と同様に、き電線・帰線・電車線(トロリ線)から構成されます。

電車線は基本的に直吊架線方式で、ほとんどの区間はセンターポール式の架線柱によって架設されます。

き電線・帰線は軌道直下の埋設管路に敷設される形式です。一般的なセンターリザベーション方式の軌道区間における電車線路設備構造を以下に示します。

※帰線は設計変更によりレール兼用になり、敷設されなくなりました

電車線引き留め部などは、特殊な楕円型の架線柱が使用されています。

峰町立体では、従来の道路照明を架線柱に共架する必要があったため、特殊な架線柱が使用されています。

 

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グリーンスタジアム前など軌道敷が広くなる区間や、片持ち式の架線柱を採用する場所では、鋼管ビームに下束が設置され、そこに架線支持物が設置されます。

軌道用信号の見通し確保のため一部例外的に採用されている片持ち式の例

→施工時は軌道中央に軌道用信号機が建植されていましたが、試運転開始前に軌道左側へ移設されています。片持ち式にした意味...

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↑鋼管ビームの例。ビームに下束が設置され、その後電車線(トロリ線)の施工となる。

↑電車線施工後

 

カーブ区間で軌道外側から電車線を支持する必要がある場所ではこのような特殊な鋼管ポールが使用されています。

JR宇都宮駅東口付近の急曲線では電車線を支持するために吊架線が別途敷設されています。

函渠内では架線高を最小まで下げている関係で、函渠内に吊架線があります。

 

また終点の芳賀・高根沢工業団地付近には道路を跨ぐ鋼管トラスが設置されています。

↑終点付近の鋼管トラス。シーサス上でセンターポールが設置できないため、8車線相当の幅員を跨ぐ鋼管トラスが設置された。

交差点では太めの架線柱から吊架線を渡しトロリ線を支持します。場所によっては架線柱が信号柱を兼ねます。なお吊架線にはベクトランコンポジットロープと呼ばれる、絶縁性の高いロープが採用されており、碍子を必要としません。

グリーンスタジアム前交差点内の吊架線。碍子が存在しない。

架空電車線方式

架空電車線は基本的に直接吊架式が採用されていますが、鬼怒川橋梁とその前後のみ、将来の高速運転に備えシンプルカテナリー式が採用されています。

↑基本的な直接吊架式区間の様子。センターポール区間では軌道建設規程の定めにより、架線柱上に照明が設置されています。

↑架線柱照明点灯の様子。間接照明のようなもので、はっきり言って道路照明の役割は果たしていない。

また架線柱番号は基本的に起点側の停留場略名+停留場からの通し番号が採用されていますが、ここでの停留場名には仮の停留場名がそのまま採用されています。

↑鬼怒川橋梁上のシンプルカテナリー式が採用されている区間

↑清陵高校前~清原地区市民センター前の架線柱番号。仮名称の作新学院北の略称がそのまま使われている

き電区間と架線柱番号一覧

 

セクション

変電所間のセクションは、当初エアセクション式を採用する予定でしたが、すべてセクションインシュレータに変更になっています。

これにより電車がセクション間に停車することは限りなく少なくなっています。

↑電車線区分標とセクションインシュレータ(~今泉変電所と今泉変電所-平出変電所間のセクション)

↑セクション部分の拡大図

き電分岐盤

宇都宮芳賀ライトレール線ではき電線は基本的に埋設されていますが、き電線からトロリ線に分岐位置の地上に、き電分岐盤を設置し、トロリ線に接続しています。

なおき電分岐盤は概ね200~300m毎に設置されていますが、宇都宮市内のセンターリザベーション区間では道路上にき電分岐盤を設置する余裕がないため、停留場のホーム上に設置されています。

敷地に余裕がある区間では、き電分岐盤が独立して設置されている。

敷地に余裕がない宇都宮市内のセンターリザベーション区間では、き電分岐盤がホーム上に設置されている。

変電所

受電のための変電所は、今泉、平出、清原、芳賀の計4箇所に建設されています。

すべての変電所で受電側は東電配電線2回線となっています。特高線ではありません。

また変電所から軌道上までは埋設管路となっています。

・今泉変電所

市有地であるうつのみやまちづくりセンター(まちぴあ)の敷地内に建設されています。

用地買収の必要がなく一番最初に工事着手されました。写真は受電側接続前になります。

・平出変電所

車両基地内の入出庫線脇に建設されています。

車両基地内で先行して電車線を供用したため最も早く受変電を開始しています。

受電にあたり周辺に配電線がなかったことから、2回線別ルートで車両基地正門付近まで配電線を新設し、2回線受電しています。

(写真左橋の建物が平出変電所、右付近にあるのが受電設備)

写真中央の配電線は、鬼怒通りから軌道を跨ぐように新設された1回線分の配電線。東電PG平出変電所の直近から分岐しています。もう一回線は写真左で、直近まで来ていた配電線を延長しています。

・清原変電所

清原変電所は清原TCからやや北に進んだ道路脇に建設されています。なおここはもともとデュポンの敷地で用地買収により建設されています。

またここも付近に東電の配電線がなかったため、清原地区市民センター前から既存の配電線2回線を延伸し、受電しています。

・芳賀変電所

芳賀変電所はもともと芳賀バスターミナルだった敷地内(町有地)に建設されています。

隣接してオートテクニックジャパン線の変電所が建っていますが、こちらからの受電ではなく、写真手前の配電線から2回線受電しています。

・変電所遠隔管理

車両基地内の指令所より、すべての変電所の状況等が遠隔で管理できるようになっています。