第3種第1級

芳賀・宇都宮LRTの工事状況や各種設備などを解説しています。

【工事の記録】鬼怒川橋梁(導入)

はじめに

ついに鬼怒川橋りょうに突入です。

着工前はLRT事業最大の難関といわれていた鬼怒川橋りょうの計画概要、工事状況に浮いてレポートしていきます。

計画概要

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 まずは単純な平面図です。

都市計画決定で河川内の橋脚の位置だけ若干膨らんでいるため、橋脚の位置・数がここから推定できます。

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*2

工事概要を書き加えてました。

河川内ですのでできる限り橋脚の本数を少なくし、かつ経済性・施工性を考慮し、LRT鬼怒川橋りょうは9径間連続PC箱桁橋となっています。

 

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次に(簡略化した)縦断面図です。

下部工はニューマチックケーソンと呼ばれる工法で構築します。

上部工は構築した橋脚を支点に、左右対称に少しずつ張り出していく、いわゆるやじろべえのような形の張出架設工法で行われます。

なお河川外の橋脚は他の高架区間と同様逆T式橋脚です。

・横断図

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*3

橋りょうの幅員は8.4m、軌道の左右に管理用通路が設けられます。

 

施工上のポイント

渇水期との関係

鬼怒川橋りょうは河川内で工事を行いますが、基本的に6月から10月末までの出水期(一般的に雨量が多くなる)の期間は河川内で工事ができません。

そのため非出水期(渇水期)となる11月~5月末までの間のみで工事を行わなければなりません。完成に必要な期間を逆算し、着工後3渇水期が必要とされてきました。これが事業着手時のLRT開業の目安となっています(2018年着工後、2018年度渇水期、2019年度渇水期、2020年度渇水期(2021年夏頃)で橋梁が完成、その後軌道工事を行い2022年3月という計算)。まあ結果的に他の区間が足を引っ張って開業は延期となりそうですが...

以上のことからLRT事業認可が下りてすぐに鬼怒川橋りょう工事が発注されることとなりました。

河川外工事との兼ね合い

上の平面図等で示した通り、堤防直上付近から河川外の橋脚までは固定式支保工で施工する必要があります。

河川外の橋脚は鬼怒川橋りょうとは別工事での発注・施工となりますが、右岸・左岸とも用地買収が完了しないと施工できず、特に左岸側は住居の立ち退きが必要なため、用地買収の進捗がネックになっています。

工事概要

2018年の3月に無事にLRTの工事認可が下り、2018年5月に鬼怒川橋りょう工事(下部・上部一括施工)が2分割で発注されました。

落札結果は以下の通りです。

 

工事名 施工業者 発注年度 着手 完成 請負額
【右岸】(仮称)鬼怒川橋梁工事(分割1号) 三井住友渡辺増渕宇都宮土建建設共同企業体 2018 2018.10 2021.8予定 2,136,000,000円
【左岸】(仮称)鬼怒川橋梁工事(分割2号) オリエンタル白石中村野澤小平建設共同企業体 2018 2018.10 2021.8予定 2,135,000,000円

 応札条件としては関東に本店または支店を置く建設業者1者と、宇都宮市内に本店を置く建設業者3者の計4者JVとされ、結果右岸、左岸とも橋りょう工事を手掛ける大手建設業者に市内3業者がくっつく形で落札となりました。

請負額はそれぞれ21億円超と、LRT事業で最も多い金額となっています。

河川内工事ですので用地買収は基本的に必要なく、管理者である国土交通省の占用許可が(当然ですが)下りたため、2018年10月頃から工事に着手しています。

後に解説しますが、工事用車両の走行ルートもできる限り既存のものを活用しており、着工までできる限り用地買収が必要ない形になっています。

 

次から1渇水期ごとにレポートしていきます。

 

*1:宇都宮市都市計画審議会説明資料に筆者加筆

*2:宇都宮市都市計画審議会説明資料に筆者加筆

*3:第11回「芳賀・宇都宮基幹公共交通検討委員会」資料より引用